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百年前の今日 1922年8月31日(木) 井上正子日記

1922年(大正11)8月28日

八月三十一日 木曜日 晴 起床五時半 就眠十時

いよいよ今日でお終いの日だと思って朝早くから子供部屋を念入りに美しくしたり、お台所のお手伝いもよくしたりした。




5月20日から始めた「百年前の今日 井上正子日記」は、本日をもって一旦終了します。

「百年前の今日」を記した日記はこのあと9月24日まで続くのですが、『ためさるる日 井上正子日記 1918-1922』として、この日記を今年度中に刊行するには、もうひと踏ん張りが必要です。明日、9月1日からの「百年前の今日」は、書籍化した『井上正子日記』として手にとって開いていただければ嬉しいです。日記は1922年9月24日で途切れますが、大伯母 井上正子はその後1998年2月、満93歳を迎える直前まで長命を保ちました。

『井上正子日記』はその長い人生のわずか6年間の出来事です。しかし、12歳から16歳までの多感な少女時代の日記は、些細な日常から100年前の社会を映し出す曇りのない鏡のように読むことができます。

 6冊の日記と真摯に向きあった2020年から2022年は、COVID-19のパンデミックに始まり、今年2月24日のロシアのウクライナ侵攻と、20世紀の人類が経験した社会の変動をうわまわる変動に晒されようとしています。ちょうど100年前は、そうした社会の変動が地球規模で始まった、まさに起源、根源となるような時期と重なっています。

 1918年スパニッシュインフルエンザのパンデミック、第一次世界大戦の終結、米騒動、シベリア出兵、1920年尼港事件、1921年原敬首相の暗殺、1922年急速な資本主義化の反動による経済恐慌など、それぞれ100年後で考えたとき、それに相応する世相が思い当たるのではないでしょうか。

 『ためさるる日 井上正子日記 1918-1922』─法蔵館刊行─は、100年前に生きた一人の少女の視点を手がかりに、これからの世界を考える道を照らしているように思うのです。


井上 迅


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1922年(大正11)8月28日 八月廿八日 月曜日 晴 起床五時 就眠十時 朝食後、直に大谷大谷[東山の大谷祖廟/図地 g-3]へ参詣に行く。黒味を帯びたる緑の松の木の間からかすかに美しい朝の日の光はさしこんでいる。 石の敷石は掃き清められているのが遠く連なっている。 二、三の人影が見える。私の歩む下駄のひびきがはっきり分かる。 静かな朝の気分にうっとりとひたりながら何にも考えないで足を運ばせる

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