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乙巳(令和5/2025)秋季彼岸会法話

 暑さ寒さも彼岸までと申しますが、今朝は言葉通り秋の気配を肌で感じましたが、ここに至るまで、この夏は本当に長い長い夏でした。それに、涼しくなったと申しましても、今日午前中、東山に参りますと蝉の鳴き声が聞こえるなか、アキアカネがツイーと空を切っていました。暑すぎて息を潜めていた蚊がここぞとばかり活発です。やはり気候変動は着々と進んでいると言わざるを得ません。



濁世ぼうふうの起悪造罪きあくぞうざい

 暴風駛雨ぼうふうしうにことならず

 諸仏しょぶつこれらをあはれみて

 すすめて浄土じょうどに帰せしめり


親鸞聖人御和讃 道綽禅師讃 五

しんらんしょうにんごわさんどうしゃくぜんじさん



 今の世に蔓延はびこる罪悪は、突如として起こる暴風雨みたいなもので、ごく自然な出来事なのでしょう。諸仏は、自然の摂理をともなう業深きわれわれ人間の営為をいつも憐れんでおいでで、だから勧んで弥陀の浄土へとお導きになるのです。


親鸞聖人御和讃 道綽禅師讃 五(拙訳)



 道綽禅師どうしゃくぜんじのこの御和讃を意味を追いながら念仏していましたら、親鸞聖人の生きる中世では、世の中の悪いこと、罪作りなこと、そうした我々に降りかかる禍いというものが、自然災害となんら異ならないという考えが、ごく当たり前に受け止められていた、そのことにハッといたします。人間が自然の恩恵を受けながら、少々悪いことを犯しても自然はそれを浄化してくれるだけのふところ深さを持ってくれていました。それがどうでしょう、21世紀に入り、それが瞬く間に逆転してしまったのは目に見えて明らかとなりました。

 昨日も友人と、彼は山口県の瀬戸内海に面した周防大島で、みかん農家を営んでいるのですが、ここ十年の気候の変わりようで、年々不作が慢性化し、高齢化にともない放棄された耕作地がますます広がっていると話していました。これは全国、全地球に当てはめても同じことが言えるのでしょう。

 友人にも一人息子がいて、今日お彼岸のお勤めで読経した次男のセツと同い年なのですが、彼らが大人になったとき、果たしてわれわれが今普通に送っているような暮らしが出来るのかどうか、そのことを思うとほんとうにやりきれなくなるのです。

 気候変動、プラごみの海洋汚染、感染症のパンデミック、そしていまどんどんと拡大し卑劣さを極める戦争と、列挙すれば切りのない人間の営み。すべて、この百年余りのあいだに吹き出した地上の病いです。人間の悪をなし罪を作り続ける営み、この人間の営みが自然に作用して、自然界を、社会を、世の中をという順にわたしたちの暮らしまで降りてきて作用しています。これは「自然法爾じねんほうに」という親鸞聖人が申された「人為を加えず、一切の存在はおのずから真理にかなっている」(『広辞苑第六版』)ということが、その枠組みをもう一つ外側、人間の及びもつかない外側にまで時間と空間を広げなければ、もう真理に適わなくなっている事態なのではないでしょうか。

 人類が地球上に誕生した時刻を、地球の年齢、46億年間の時間を一年365日に例えて見ると、人類がこの地球上に現れたのは12月31日、大晦日の11時59分58秒なんだそうです。

 自然の枠組みをもう一つ外側、人間の及びもつかない外側にまで時間と空間を広げるというのは、宇宙も含めて自然なのだと知ることになるのです。

 そう思うと、われわれの存在というのは、ほんとうに芥子粒よりももっともっと小さく、存在しないに等しいと思えてくるのですが、過去から未来へと一方向に手渡すバトンが、こうして今を生きておりますと、実はちゃんと手の中に握られていることもまた真理なのです。手の中のバトンをできるだけ遠くへ届けるように、諸仏の願い、弥陀の本願はひとりひとりのバトン、すなわち南無阿弥陀仏の六文字のなかにこめられていると感じられるのです。

 私たちのゴールなきバトンリレーは、有限な枠組みで営まれつつも、おのずから真理にかなうものへと繋つながっているのではないでしょうか。


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