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百年前の昨日1922年6月22日と今日23日 井上正子日記

私の胸は今悲しみとおそれに一杯になっている。


1922年(大正11)6月22日


六月二十二日 木曜日 晴 起床六時 就眠十時

私の胸は今悲しみとおそれに一杯になっている。

私等のあの可愛い従兄の子供が、死にかけているのだそうだ。

昨日か、伯母様が須磨からつれてお帰りになったのだが、今日急に悪くなってしまったとの事。

今朝から母上がいらっしゃる。電話がかかる。大騒ぎである。

でも意識はまだ確かだけれど、衰弱が非常なのと、結核性が脳を冒しているので、とても駄目だと主治医の〓〔萩ヵ〕村さんも高木先生も、平井博士も絶望の宣言をなすったとの報に私等はがっかりしてしまった。

兄さんは今、亜米利加にいらっしゃるし、伯父様にしても伯母様にしても、たった独りの可愛い孫であるため、家中がみんな悲しみ切っている。

五つの可愛い盛りの種ちゃんがこうした事になろうとは夢にも信じられない。

頭脳の明晰なお医者さんもお驚きになった程の鋭敏な頭の持ち主の種ちゃんを、今もし失われたら、と思う時たまらなく悲しくなる。

私等は祈れるものなら祈りたい。

種ちゃんは必度死なない。私は信じたい。ああ元の種ちゃんである様に。


1922年(大正11)6月23日


六月二十三日 金曜日 晴 起床五時二十分 就眠十時半

父上が今日お見舞いにいらっしゃる。やっぱり容態は私に安心をあたえない。清い純な魂をどんな悪魔がとろうとするのか。

私等の気持ちは落ち着かない。不安にのみおそわれている。



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