1922年(大正11)8月21日
八月廿一日 月曜日 晴 起床五時半 就眠十時
女中が藪入やぶいりをしたので今朝は私と従妹がお台所の雑用をする。
中々忙しいけれど、日一日が充実していて気持ちがいい。
よく働いた。自分で働けるだけ働いてみた。
隠居の女中が手伝いに来るのを断った。殆ど自分独りで一日働く時、非常な興味と快感を味わった。
母上が後で〝疲びれの出ない様にして下さい〟っておっしゃった。
夜やすむ時、疲れる。でもいやとは思わない。働いてみたい。ほんとに働いてみたいと思うばかりである。
1922年(大正11)8月22日
八月廿二日 火曜日 晴 起床五時 就眠十時
母上は毎朝、この間から〈本能と宗教〉の講演を聞きにおこしになる。
早くお出ましになるのを見送って、帰っていらっしゃるまでに美しく美しくしておこうと一生懸命に精を出す。
八時前にお帰りになる。ほめて下さる。私はそれが嬉しくてたまらないのだ。子供みた様だけれど……
洗濯をした。足と腰がいたくなる。やっぱり駄目だなぁと思う。
でもいいことだと思われる。自分が女中自身になって働くのだから、どれだけ多くの仕事をしていて呉れるのかがよく分かってほんとにいいと思う。
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